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BOSSの回想録(18)


<「最終スパンクハッピー」③> 



 「OD、どっちにする?すまんが、工場のパンをお前、昨日食い終わっただろ?だからセブンの食パンになるけど、ダブルソフトと超熟とどっちがいい?」


 「超熟デス」


 「わかっった。両手で持つのか?」


 「本当に一番良いのは、頭の上に乗せるじゃないスか!でも、ヘッドホンしてるから無理じゃないスか。なんで、手で持つデス」


 「小田さーん、イヤホンに変えますか?」


 「自分はODじゃないスか!!似てるからしょうがないけど~。ミトモさ、、、、小田さんは自分より大人っぽくてセクシーセクシーセクシーじゃないスか~(笑)」


 「アカクくんごめん(笑)。小田さん入り込んでるから、付き合ってくれ(笑)」


 「了解です。OD、イヤホンあるよ、、、、、そのう、、、、どうしてもパンを頭の上に?、、、、、乗せたかったら、、、、、そっちの方がさ」


 「うっヒャッヒャ!!それでは、そっちでお願いするじゃないスか!!」



 サルバドール・ダリのモチーフで、頭にバケットを乗せ、ネッカチーフで巻いている女がいるが、ヘッドフォンからイヤホンに変えて、頭に食パンを乗せ、紐で顎に結わいているODは、アイコニックに言ってもシュール(レアリスム)と、アスリート性を融合した、奇跡の姿で、我々は笑いを堪えるのに必死だった。


 ほとんどの歌手は、テイク1はテストテイクだ。厳密にはテイク1の前に、喉慣らしにテストテイクを歌うのだが、ODに保健や助走の時間は要らなかった。全ての曲をテイク1でOKを出した。



 「君は 僕のー夏のー天才っ!!、、、、、、、、、はーいOK、これで全部終わったデス。そっち(ミキシングルーム)に行くじゃないスか~」



 こちらにOKを言わせる前に自分でOKといって歌い終えてしまう。しかし、ODが歌詞とメロディーから作った、ブレス位置とあらゆるニュアンスは完璧で、実際にOKだった。これは「早くてすごい」という意味ではない。そもそもODは歌い直したことがないので、テイクという概念を知らないのだ。ODにとって、録音とは、歌う前に完全な状態にして、一回だけ歌うことを意味していた。


 単にピッチがジャストで歌い上げる歌唱力はいくらでもある。ODの伸びやかでキュートな唱法は、大変失礼だが、独唱性とトランスが強い小田さんよりも魅力的、、、、、というより、菊地君とユニゾンでデュエットするという楽曲上の要請を理解していた。ODの極端なマイペースと病理の数々は、音楽をやる時だけ全く消え去り、関係全員へのホスピタリティと調和に溢れ、何よりも彼女自身の喜びに満ちていた。


 歌とはなんだろうか?菊地君も同感だと信じるが、ダークサイドの発露も歌である。なにせ古来より、呼気は清、吐気は毒と言われている。毒は薬に、薬は毒に。つまりリビドー。英語の慣用表現であれば、オーヴァーリビドーバグ。しかし、そんなシンプルな二元論を止揚する歌が必ずある。それは完璧な健康と、陽の気、澄んだ心と、完全な無知、そして、そうした状態が、<キュート>という状態を、ナチュールとして発生