top of page
検索

BOSSの回想録(10)

<「菊地成孔+BOSS THE NK+OD+小田朋美」①>

 「うわー。うわー。ホントにそっくりじゃないスか~。凄いじゃないスか~」

ODは小田さんの顔を撫で、自分の顔も撫でたり、パッとステップバックして、鏡を見てはまた感心し、パンをパクッとくわえて、また小田さんの顔を見つめたりしている。  小田さんの部屋のテーブルの上は、セブン&アイのコンビニエンスストアで買ってきたパンが山のように積んであった。小田さんはいつものクールな感じで微笑みながらも、明らかに困惑していた。菊地くんはお約束で遅れている。  *    *    *    *   *

 私は菊地くんに了解を得た上で、小田朋美さんの身辺を洗わせてもらった。死んだと思っている双子の姉妹がいるとか、御父君が政府のヒトクローンの極秘プロジェクトに関わっていて、実は小田さん自身が誰かのアヴァターであるとかいった事はない。と確定してから、私は小田さんにお会いして事の次第を全て話した。  パークハイアットのピークカフェで待ち合わせすると、小田さんは私を見つけ、軽く腰を浮かせて、すぐにまた座り直し、私が「小田朋美さんですね。初めまして」と言うと、「え?なに?これドッキリ?」と云った、思いっきり怪訝な表情で私を見つめていた。

 「え?あなた、菊地さんじゃないんですか?、、、、菊地さん、、、でしょ?(苦笑)」

 「いえいえ、かくかくしかじかでして」

 「はあ、、、、でも、、、そんなの、、、ちょっと信じられないな(苦笑)」

 「まあまあそれは、当日明らかになります。菊地くんも来るので」

 「<菊地くんも>って、、、(苦笑)」

 「それより、本人に会ったら、それどころじゃなく驚かれると思います。事前に写真、ご覧になりますか?」

 「はい、是非、、、」


 私はODがユニクロの部屋着を着て、1斤のパンを食べながらふざけて踊っている写真を見せた。後のインスタグラムの平均値である。ODはバレリーナの様に両手を180度広げて、片足を背後に伸ばし、片足のポイントだけで静止することができた。



 「え、なんかこれ、、、、あたし、、、、、ですよね(焦)、、、、あたし、こんな、、、、、え?いつ撮ったんですか?いつこれ?」

 「いやだから、これがODです(笑)。ここに来る前に撮りました」

 「嫌だ気持ち悪い(苦笑)、、、、でも、、、俄然興味が出てきました(笑)」

 「そうですか(笑)、あの、ですのでね、小田さん、要点はそこだけです。彼女がデビューしたら、カスタマーのほとんどは、小田朋美さんが、一人二役でやっている、、、というか、単に今回のスパンクハッピー再始動参加に際する芸名だと思うでしょう」

 「ごめんなさい飲み込みが悪くて、、、、あのう、、、本当にあなたは菊地さんじゃない、のね?」


 「そうです」

 「なんだけど、菊地さんが芸名でやっている態にする、、、んですね?」

 「そうです(笑)」

 「そもそもあのー、それはどうしてなんですか?」

 「すみません。今は言えません(笑)。でも」

 「でも?」

 「誰だってそう思わざるを得ないのでは?」

 「そう、、、ですね(呆然)、、、、じゃあまあ、じゃあまあ、それはそうだとして、そ

  れは良いじゃないですか、菊地さんとあなたの間でコンセンサスとれてるんだから」

 「はい」


 「でも、あたしも、この子と同一人物だとして、スパンクハッピーを始めるの?」

 「いや、そこをご相談させて頂きたいんです。とぼけて頂いても大丈夫ですよ。ODと自分は絶対に別人だと」

 「、、、でも、無理ですよね、、、、声もそっくりだし」